時間の中身にせまる『モモ』ファンタジーにおわらず、読者を主体的に参加させる『はてしない物語』具体的に生きることと想像力の大切さなど、世代をこえて支持される工ンデ文学の秘密をおいたちや思想遍歴、未訳の作品も加えて解説。
ファンタージエンからの帰還――いくつかのインタビューで彼は、「『はてしない物語』を書くのは、命がけでした。この物語は、わたしを危うく精神病院に送りこむところでした」と語っている。苦しみの最大の原因は、作者自身どうしてもファンタージエン国の出口を見いだすことができなかったことにある。すでに述べたように、ミヒャエル・エンデは、作品の内部における純粋な遊びの自由を重視するが、遊びの自由というのは、バスチアンが自分のいい加減な空想によってシュラムッフェンを創り出した時のように、気まぐれな思いつきにまかせて行き当たりばったりに進むことではない。遊びには遊びの厳密なルールがある。物語自身の進行にしたがってそのルールを見いだしていくのでなければ、物語の真実は成立せず、結集的には内部崩壊してしまう。――本書より
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