犯罪をあばき、人に死をも求刑する二千人の検事たち。その日常、政治や警察との複雑な関係、内部のすさまじい確執。有罪判決九九・九七パーセントをほこる秘密のエリート集団を、その内側から克明にえがく。
検事の鋭い目――取り調べは外部を遮断した密室おこなわれるので、事実は必ずしもはっきり断定はできない。しかし、取り調べだから白熱した雰囲気にはなる。ときに怒鳴りあげることもあり、ときに静かに説得的になることもある。かわらないのは検事が被疑者の視線をたえずとらえる鋭い目である。ちょっとした目の動きに被疑者の心理的変化がうつしだされるという。そんな微妙さをよみとりながら調べはすすめられるが、検事が冷静さを失うようなことはない。検事が興奮すれば事実解明は不可能になる。冷静に追及するからこそ、被疑者の弁明はツジツマがあわなくなり、検事が有利な立場になるのだ。ロッキード事件の国会喚問で、頑強に否定していた証人が、検察の被疑者になったとたん自白したのも、検事の冷静さが最後にはモノをいったわけである。――本書より
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