-自己愛-(ナルシズム)の心理は誰のこころにも潜んでいる。自己を生かす創造の活力源となる健全なナルシズム、狂気と破滅をもたらす歪められた未熟なナルシズム、過剰な自己顕示、性的倒錯、妄想型神経症など、多くの症例を通して、正常と異常を分かつ、こころの不思議にメスを入れる。
レオナルドにみるナルシズム――フロイトによれば、母ひとりに育てられた子は、母に愛された自分の立場を逆転させて、自分を母の立場におき(同一化という)、自分自身の幼い姿に似た者(少年)を愛の対象とする。すなわら、「いま成人となったレオナルドが愛している子どもたちは、子どもであった彼自身の代理であり更新にほかならないのである」。したがって、過去の自分を愛するということは、幼いときに遡って、自分自身を愛すること、すなわち自己愛におちいったわけなのである。フロイトはこの心理的なプロセスを次のような文章で表現している。「それをわれわれは、彼はナルチシズム(またはナルシズム)の途上で、愛の対象を見出すというふうに表現するのである」――本書より
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