「イスラエルの家の失われた羊以外の者にはつかわされていない」というイエスの言葉はユダヤ人のみに向けられたのだろうか。天国とはどんな場所か。パリサイ人とは何者か。羊飼いの貧しさとはどういう状態をいうのか。一見馴染みにくく思われる聖書の言葉は人間存在の根本を普遍性の光で満たしながら生の真理を解き明かしているのである。
自分の貧しさを知る人とは――私が日本に初めて来たのは、第二次大戦直後であつて、日本人は確かに貧しかった。だから思うに、彼らは天国に近かった。また多くの日本人が熱心にイエスの教えに耳傾け、喜んでそれを受け入れた。しかし残念ながら、経済界の繁栄とともに――特に東京オリンピック以来日本人の精神面は衰えたと私は恩う。日本はもはや貧しい国ではなく、アジアにおける――そして世界における――富める国の一つである。だから国民として、天国からは遠のいている。このように言うのは申し訳ないが、言わざるを得ない。――本書より
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