ニカラグア政府転覆のマニュアル「CIA手引書」が暴露された。「グリーン・ベレー」以来のダーティーな体質ばかりがイメージされる。だが、現実のCIAは、職員1万6千余、予算7億5千万ドル、海外で雇われるスパイ、隠し資金を加えれば、この数倍の規模に達する巨大官僚組織なのである。スパイ衛星をはじめ、偵察機、通信傍受により集められた膨大なナマ情報を整理・分析し、いかに完成品に仕立てあげるかが問われるようになってきた。本書は、海外支局員の報告書作成、山積みになったマル秘文書など日常の姿を描きながら、近代的インテリジェンスへと脱皮をはかるCIAの実像を明らかにする。
本部へのレポート――本部への通信は大別して、「作戦報告」と「情勢報告」の2つがある。刻々と動く現地の情勢をレポートするのが「情勢報告」だ。「情勢報告」は、新聞一面をにぎわすような政変や大事件がない場合でも、最低週1回は作成するのが普通だ。ある工作員経験者によると、とり立てて何も報告することがないまま、週末が近づいてくると、ソワソワ落ち着いていられなくなることもあるという。かといって、何も報告しないと、本部での自分の評価が落ちる。この経験者は「上司にもよるが、質より量が重く見られることがあり、げんに、自分の仲間で、いい加減なレポートを何本も送って出世したヤツもいる」と嘆いていた。――本書より
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