帝国主義列強による、苛酷な分割支配のもとで、アジア諸民族はつぎつぎと立ちあがっていった。反乱・独立・解放・革命と各民族はみずからの方向を見出していく。植民地下のアジア諸国の動向を類型化し、そのなかの歴史の一貫性・必然性を著書は鋭く指摘する。独立そして混迷。いまアジアは何を考え、どこに進もうとしているのか。錯綜する現代アジアの諸相を見事に分析した本書は21世紀にむけて多くの示唆と展望を与えるにちがいない。
メシアの出現――大衆は貧困と抑圧の下にありながら、既存の秩序に対して反抗よりもむしろ忍従をえらぶ。時折、反抗する者が現われても、それは荒野の叫びにひとしく、ただ無力の証しとなるにすぎない。多くの場合、大衆はひややかに見殺す。だが、非道と無法を味わうたびに、大衆の心のなかにはげしい怒りが、蓄積されてゆく。ここに歴史の底流がある。それがひとたび組織されると、なにものをも押し流さずにはおかぬ奔流となる。無告の大衆が自らに力を感ずるのは、神が自分たちに味方していると感じたときである。それ以外に一体、全能の権力者に立ち向える拠りどころがありえたであろうか。メシアこそ、大衆が暗黒のなかで久しく待ち望んでいた光明であった。――本書より
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