モンスーンの風土にめぐまれた多島海。東南アジアは中国・インド両文明のはざまにありながらも、アンコール・ワット、ボロブドゥールに象徴される特異な文化を育んできた。しかし、香料を契機とする西洋世界の侵入、それにひきつづく植民地化は、あまりに大きな波紋を残した。強制栽培制度による略取、太平洋戦争下の荒廃を負った独立への道はきわめて険しいものであった。本書は、曲折にみちた東南アジア史の本質を統一的視点からあざやかに解明した。
東南アジアの一体性――1970年代も半ばを過ぎた現在、かつての東南アジア植民地はすべて独立を獲得したが、民族革命の達成にくらべて社会的平等の実現はまだこれからの課題と言えよう。またその中には純然たる社会主義国家から露骨な反共独裁国家まで驚くほどの幅が見られるが、それにもかかわらず、もはや東南アジアの一体性について疑いを抱く者はほとんどないと言ってよかろう。インドシナ三国における共産政権の成立以後、王制をとる仏教国タイとの間の緊張が伝えられ、こまかい動きを見れば東南アジア全体の政治的安定は遠い将来のこととも思えるが、ただひとつ明らかなことは、ここではもはやどのような大国の介入も歓迎されないだろうということである。――本書より
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