人間にとって、社会とはなにか。知識とはなにか。そして人間とは、なんなのか。これらの問いに、社会科学はどのような方法で、どのように答え、危機に立つ現代社会をどこに導こうとするのか。ルソー、スミス、マルクスなどの方法や考え方も紹介しながら、つきつけられた課題と正面から取り組んだ、ユニークな社会科学入門である。 共通する思考様式――社会科学といっても、現実に存在するのは、経済学とか政治学とか法学とかいう個別社会科学の集合体=社会諸科学にすぎない。それにもかかわらず、社会諸科学に共通した問題・性格・思考様式というものが、あるのではないだろうか。さらに、すべての科学に共通したそういうものがありはしないか。人間は、社会をつくり、社会のなかで生活し、社会を変革する。かんたんにいえば、それが人間の生活なのであり、人間が自己を実現しようと永遠に努力する過程なのである。この過程で人間は、生きるために(人間らしく生きるために)、人間について考え、社会について考える。そういう思考が、社会科学を生むのである。――本書から