出家仏教を捨て、法然を超えて、在家仏教をうちたてた親鸞……。親鸞ほど、救われない人間、卑小な自己の姿を、真正面からみすえた宗教者はあるまい。その親鸞が、なぜ、善人よりも悪人が救われるといったのか。なぜ、おのれの力にたよることをいましめ、他力にすがれといったのか。本書は、人間が生きているということの真実を、その深みにおいて把えた偉大な求道者の生涯と思想を描いた好著。
〈真実の生を求めつづけた人〉――親鸞は激動する鎌倉時代の初頭に、現実に生きる自己の在りようを念仏の教えを通して、探求していった求道者だった。かれの思想と実践は、さまざまな角度から、多くの人びとによって解明されるべきであろう。なぜならば、親鸞という求道者は、念仏とか信心という仏教のことばを独自の態度から解釈することをもって、本領としたからではなく、万人がそれを求めそれに依って生きるところの「真実」を求めつづけた人であったからである。私が本書を書いたのも、現代に生をけたわれわれが、「真実」を求めて歩んだ求道者親鸞から、各自の生きがいを見出したいと願うからである。――本書より
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