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近代社会の経済理論

「通常の経済原論ないし経済理論の教科書では、理想型の資本主義社会を前提として、企業や家計の生態が説明されるとともに、社会の機構と動態が分析されている。けれども現実の資本主義社会は理想型どおりではないし、また資本主義諸国は世界の一部をなしているにすぎない。もはや時代は、非資本主義的要素や勢力を無視ないし軽視すると、現実の社会の重要な現象を理解しえないばかりか、硬直的な視角から、かたくなに世の中を見るという羽目に陥ってしまうような段階にきている。
しかしながら勢力を増大しつつある非資本主義経済と、資本主義経済の間には、それらが共に近代的な経済体制であるがゆえの、多くの論理の共通点があるし、また現実の資本主義経済(たとえば日本経済)が理想型どおりでないといっても、「ずれ」は無原則的ではなく、「ずれ」には「ずれ」の論理がある。本書においては、対象を理想型の資本主義経済に限定せず、社会主義経済を含む近代社会に一貫する経済合理性を明らかにすると共に、他方において日本の経済が明治革命以後たどって来た特異な経済発展をも説得的に説明することを試みる。したがって本書は、広い意味での比較体制論の領域に属するであろうが、その領域の屁金的な研究よりも、さらに論理的・分析的である。それと同時に本書は、その視野が短期的であるという意味で不完全であり、一層大部の書物の上巻であるに過ぎないかも知れないということを指摘しておかねばならない。」(本書「はしがき」より)

本書は1967から68年に大阪大学で行われた講義をもとにしています。

【目次より】
はしがき
序論 近代国民経済
理想型としての近代国民経済 ー 本書の梗概
第1部 経済のミクロ的合理性
1.生産技術
生産の樹木図  生産関数 ー 総生産関数
2.技術の選択
異なる技術の併用 ー 総額崇拝の誤謬
3.利潤の分配
分配とイデオロギー ー イデオロギー的利潤分配の非合理性
4.計画の変更
企業者活動の相対性 ー ストルパー・サミュエルソンの定理とリブチンスキーの定理の拡張
5.家計の行動
家計の独立性  伝統的需要理論 ー 闇市場のある場合
第2部 市場機構と計画
6.伸縮価格経済
価格決定の二方式 ー 価格形成過程の分析
7.固定価格経済
ケインズ登場 ー 有効需要の原理
8.分権的計画経済
資本財および労働の最適配置  ー 価格公定の法則
第3部 国家による経済制御
9.財政と完全雇用
政府の経済行為  ー  完全雇用乗数
10.二重構造と失業
日本の潜在的失業 ー ケインズ政策と潜在的失業