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帝国と慈善

史上初のキリスト教帝国ビザンツ。普遍的なキリスト教ローマ理念は、多様な民族から成る世界に号令をかける皇帝のもと、集権的な富の収奪・再分配機構を構築した。神の恩寵としての慈善を実践する帝権。市民の旺盛な寄進行為。叢生する修道士。古代ポリスの寛厚は、帝国財政に包摂され、救済の摂理(オイコノミア)に基礎付けられた財の再分配原理を定立した。諸民族を包含する統合の範型を創った帝国は、後のキリスト教、イスラム両世界にとって一つの規範となり、現代にも甦る。近代西欧の合わせ鏡として、ネガティブ・イメージのもとに語られたビザンツ。その認識像に潜む近代人の自画像を検証しつつ、今日世界に伏流する帝国の文法を、源流に遡って解きほぐす。帝国とは何か、を考える上で貴重な参照系となろう。日経・経済図書文化賞受賞。

【目次より】
序論 「帝国」の原像ヘ ビザンツ国家の射程
一 歴史の律動のなかで 二 ビザンツ国家の帝国性 三 本書のねらいと構成
第一部 帝国教会の財産形成
第一章 キリスト教帝国と教会 教会の税制特権形成
第二章 教会寄進と国家権力 五・六世紀の法制化
第二部 寄進・慈善・国家権力
第三章 マリアの遺言と帝国役人 貴族の遺言執行と国家機構
第四章 アッタレイアテスの家産政策 慈善施設設立の理念と打算
第五章 ヨハネスニ世と帝国病院 皇帝寄進とコンスタンティノープルの福祉
第六章 ビザンツ国家と慈善施設 皇帝・教会・市民をめぐる救貧制度
第三部 神の資産と皇帝の配慮
第七章 財政問題のなかの修道院 皇帝たちの苦悩と配慮
第八章 教会施設の俗人管理問題 カリスティキアの展開と濫用
第九章 修道院所領と帝国租税システム 神の恩寵・皇帝の管理
結語

あとがき
参考文献