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ヒュームにおける正義と統治

「文明社会」とは何か。それは人々がどのように結合し交流する社会なのか。本書では、十八世紀スコットランドの哲学者デイヴィッド・ヒュームの思想に即して、この問いに対するひとつの答えを模索する。ヒュームの叙述は、人間社会が孕む不安定性を見つめつつ、一方では「正義」と「商業」を軸として社会の形成と発展の自然的な可能性を豊かに描き出し、他方では「統治」を鍵概念として社会の強制的な秩序化の峻厳な必要性を示している。さらにそこからは、ヒュームの目に映った文明社会それ自体の矛盾――正義と統治、自由と権力、諸国の調和と対立、商業発展と公債累増の間の矛盾――が明らかになる。はたして現代の我々にとって、ヒュームの描くこの両義性は、既に乗り越えられた過去なのであろうか。

【目次より】
序章 文明社会と両義性
第一部 文明社会の発展 正義をめぐる思考の系列
第一章 正義 道徳論における文明社会の結合原理
第二章 商業発展 経済論における文明社会発展の法則性の解明
第三章 自由の擁護 国内政治に関する文明化認識の展開
第四章 国際的な調和 対外政策に関する文明化認識の含意
第二部 政治社会の安定 統治をめぐる思考の系列
第五章 統治 道徳論におけるもう―つの結合原理
第六章 自由から権力へ 国内政治に関する統治の論理の展開
第七章 勢力均衡 対外政策に関する統治の論理の含意
読解 第四節 勢力均衡論と国際間正義の相互関係について
第八章 公債累増 経済論における統治の論理とその帰結
終章 ヒュームの二元的社会認識とその含意
あとがき