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近代日本の国際関係認識

この世界とは何か、を説明しようとする時、意識するとしないとにかかわらず、思い浮かべ、考えざるを得ない問いがある。それは、「人間とは何か」「国家とは何か」「国際関係とは何か」という3つの問いである。これらの問いが織りなす「世界のできあがり方」の構造を、本書は<自我・国家・国際関係>と呼ぶ。現在も世界の人々を拘束し続ける、この認識論的機制の近代日本における形成過程を、明治末から昭和前半期に活躍した哲学史家、朝永三十郎の「文脈設定者」としての思想的苦闘から描き出す。「国際関係とは何か」という、国際関係研究の根源への問いを問うには、世界国家の可能性を封じ込めた瞬間を把捉しなければならない。カントの『永遠平和のために』の単なる解説書とされてきた朝永の『カントの平和論』における、「国際」と「国家」の矛盾、という議論に、その瞬間は埋蔵されていたのである。学問領域を横断し、理論と歴史、思想と実証を交錯させて根源への問いへ挑み、21世紀の世界の見方、考え方を広く問いかける。

【目次より】
はじめに
第一部 背景と枠組
第一章 国際関係認識とはなにか
第二章 国際関係認識の研究枠組
第三章 カントと近代国際関係認識
第二部 朝永三十郎と『カントの平和論』
第一章 近代日本と朝永三十郎
第二章 『カントの平和論』の成立過程
第三章 自己申告上の契機
第四章 初期の朝氷 一九〇二~〇九年
第五章 留学とその後一九〇九~一六年
第六章「カントの平和論』前後及び晩年 一九一七~五一年
第三部 近代国際関係認識の原的形成
第一章 朝永三十郎の意味
第二章 カント解釈の系譜学 朝永以後
第三章 自我・国家・国際関係
あとがき

参考文献