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他者の甦り

アウシュヴィッツは、過去となった悲劇の一例ではない。その全体主義の思想は、今日の人類的危機や破綻の原点となっている。それでは、この悲劇を脱出する思想的手がかりは、どのように求められるか。本書はまず、アウシュヴィッツの思想的温床を問うてギリシア哲学の系譜をたどり、他者の抹殺、すなわち人間の非人間化という問題が、アリストテレス・デカルト・ニーチェ・ハイデガーに至る存在神論に根差すことを明示する。その上でキリスト教の思索に目を転じ、古代教父ニュッサのグレゴリオスと中世の神秘家エックハルトの思想を考察、さらに旧約物語の解釈を通して、ヘブライ的伝統の中に他者に開かれてある人間の共生への手がかりを見出す。これまで著者が一貫して探求してきたヘブライ的脱在の思索を、初めて平易に書き下ろした講演。

【目次より】
「長崎純心レクチャーズ」について 片岡千鶴子
目次
序 現代の野蛮からの脱出
第一章 アウシュヴィッツとは何か
第一節 生をうばう
第二節 死をうばう
第三節 根源悪とは?
第二章 存在神論の歴史と現代におけるその根本的性格
第一節 アリストテレスから
第二節 デカルト
第三節 ニーチェ
第四節 技術学 総かり立て体制
第五節 技術的存在神論の超出にむけて
第三章 古代中世キリスト教思潮から
第一節 ギリシア教父ニュッサのグレゴリオス
第二節 西欧中世ドイツの神秘家マイスター・エックハルト
第四章 ヘブライ思想 エヒイェロギアの構築へむけて
第一節 アブラハム物語り 死と再生
第二節 出エジプト物語り ヤハウェとモーセをめぐって
第三節 ハヤトロギア・エヒイェロギア・存在神論
第四節 エリヤ物語り 沈黙の声と「イスラエルの残りの者」をめぐって
むすびとひらき
文献表

あとがき