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アメリカ的理念の身体

人権概念を史上初めて提唱した17世紀のピューリタン、ロジャー・ウィリアムズ。アメリカ独立以前の、ジョン・ロックより半世紀も早い出来事であったことは、わが国ではまったく知られていない。本書は、「寛容と良心」「政教分離」「信教の自由」という倫理学上の鍵概念をめぐる哲学的探求であると同時に、それらが初期アメリカ社会の歴史においてどのような実験と紆余曲折を経てきたかを尋ねる政治学的な探求である。まず中世スコラ学の良心論から歴史的系譜を辿り、近代の愚行権の神学的由来に触れた上で、現代社会が享受する自由がいずれも宗教的主張を淵源とすることを示し、自由主義の中核概念である寛容を批判的に検討する。次に、現代憲法論の争点ともなる政教分離に焦点を当て、その原型であるウィリアムズの思想と歴史的評価の変遷を考察、発展期の矛盾と逆説から生まれた歴史的な知恵を尋ねる。さらに、信教の自由の具体的な表現として、初期ハーヴァード大学に見るピューリタニズムの知性主義、反知性主義としての信仰復興運動、市場原理に動かされる20世紀の教会を論じ、現代アメリカ社会の実利志向や大統領選挙にも影響を及ぼし続ける思想構造を分析する。わが国で手薄なアメリカの宗教理解を深化させ、アメリカを内面から思想史的に探求した画期的業績。ますます多元化する現代社会において、異なる思想が平和裡に共存するためのモデルを提供して、現代リベラリズムにも一石を投じる。

【目次より】
序章
第一部 寛容論と良心論
第一章 中世的寛容論から見た初期アメリカ社会の政治と宗教
第二章 「誤れる良心」と「愚行権」
第三章 「誤れる良心」と「偽れる良心」をどう扱うか 現代寛容論への問いかけ
第四章 人はなぜ平等なのか
第二部 政教分離論 発展期の錯綜と現代の憲法理解
第五章 初期アメリカ社会における政教分離論の変容と成熟
第六章 ロジャー・ウィリアムズの孤独
第七章 さまよえる闘士 ロジャー・ウィリアムズ評価の変遷と今日の政教分離論
第八章 教会職と政治職
第三部 信教の自由論 プロテスタント的な自由競争原理の帰結
第九章 プロテスタント的な大学理念の創設
第一〇章 ジョナサン・エドワーズと「大覚醒」の研究史
第一一章 反知性主義の伝統と大衆リヴァイヴァリズム Harvardism, Yalism, Princetonismをぶっとばせ
第一二章 キリスト教の女性化と二〇世紀的反動としての男性化
結章
あとがき

引用文献一覧