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無と宗教経験

「無」という概念を、自己否定の徹底が自ずから根底的な自己肯定へと至る事態と見做し、主に禅を題材にして意味、言語、意識などの角度から人間存在の根源事象を探った野心作。禅の原典テキストまで遡り精確な文献解釈を行いつつも、そこに表れるものを宗教経験の事柄として生きた姿を吟味、さらに西洋神秘主義など他の宗教経験との比較を通じて禅の特殊性と普遍性を浮き彫りにする。

【目次より】
序論 本書の目的
第一章 肯定としての無 禅言語の二つの次元
はじめに
第一節 牛頭宗における「無」
第二節 無が無でなくなる構造
第三節 即非の論理と空の次元
おわりに
第二章 禅言語の逆説構造 ウィトゲンシュタインの規則論を手がかりに
はじめに
第一節 問いが発せられる条件
第二節 対法と事物一般の相対化
第三節 意外性の感覚
おわりに
第三章 宗教経験と悟り ウィリアム・ジェイムズと白隠との比較から
はじめに
第一節 ジェイムズにおける「意識の神秘的状態」
第二節 「実在の感覚」と見性
第三節 「無」についての諸解釈
第四節 実在性の空解
おわりに
第四章 見性の心理構造 白隠を中心に
はじめに
第一節 見性に先行する条件
第二節 見性の諸特徴
第三節 自らを信じるという問題
第五章 臨済の「無事」について 悟りと空の経験
はじめに
第一節 開悟の経験の内実
第二節 絶対無と空
第六章 禅と本覚 『大乗起信論』における所説をめぐって
はじめに
第一節 『大乗起信論』の本覚思想の内容
第二節 本覚と頓悟との関係 『起信論』から禅ヘ
第三節 空寂知としての頓悟 宗密の荷沢禅解釈
第七章 荷沢神会の「衆生心」について 禅における自然と頓悟の問題
はじめに
第一節 荷沢神会における「衆生心」の概念
第二節 禅における頓漸の実際
おわりに
付論 デウス・空・救済 不干斎ハビアンの思想について
あとがき
初出一覧
参考文献