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教父と古典解釈

ギリシア教父たちは西洋古典の内にも救世主像を見出そうと試みた。異教文化受容を巡る教父の神学理解と、写本の筆写に携わる修道士や聖職者の隠れた努力を支えた修道院の精神とは何か。それが近代ルネサンスの先駆けともなったことを示す本書は、古典研究と教父学を総合的に考察して、中世哲学と古典学の領域に新たな視座を提供した。
9~10世紀ビザンティン時代の人文主義(特にアレタス)から遡って、教父時代における古典の受容と精神的境位がそれら後世のヒューマニズムに合致するものであることを実証し、キリスト教的人文主義の根底に潜むものを普遍的な相において探った。ホメロスなどの作品の解釈と伝承を分析し、西洋古典文献学を実証的写本伝承史のレベルから再構成。教父学の視点から異文化受容のあり方に光を当て、それがキリスト教ヒューマニズムの淵源であることを明らかにする。
地中海学会ヘレンド賞受賞。


【目次より】
序章 本書の構成と目的について 古典文献伝承と教父神学
第一部 ビザンティン時代における人文主義の成立と神学
第一章 地中海世界における書物史 カイサレイアのアレタスまでの文献史
第二章 アレタスの人文主義的神学 『黙示録注解』を中心に
第二部 カッパドキア教父たちの古典観と神学
第三章 バシレイオスと「ルネッサンス」 神学と人文主義の関係をめぐって
第四章 ニュッサのグレゴリオスにおける「神の像」理解の変容 人間性の再構築
第三部 終末論と予型論
第五章 オリゲネス的終末論の展開と証聖者マクシモス アポカタスタシスを中心に
第六章 証聖者マクシモスにおける終末論と神化 旧約聖書解釈との関連で
第四部 教父神学から古典解釈ヘ
第七章 アレクサンドレイアのクレメンスによる『オデュッセイア』解釈 古典の神学的受容
第八章 コンスタンティノス大帝とウェルギリウス『牧歌』第四歌 「異教予型論」と古典の受容
結章 人文主義的教父神学の地平と終末論的予型論の射程 総括と展望
あとがき

参考文献表