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大清帝国と中華の混迷

北東アジアの雄・ヌルハチ率いる満洲人の国家は、長城を越えて漢人を圧倒し、未曾有の大版図を実現した。康熙帝・雍正帝・乾隆帝による最盛期から、アヘン戦争・日清戦争をへて、ラストエンペラー・溥儀、西太后、李鴻章、孫文らが登場する清末まで、栄光と苦闘の270年を描き出す。「中華の文明」ではなくチベット仏教に支えられた、輝ける大帝国が抱え込んだ苦悩とは。「近代東アジア」と「中華民族」はいかに創り出されたか。


講談社創業100周年記念企画「興亡の世界史」の学術文庫版。大好評、第3期の5冊目。満洲の雄・ヌルハチが草創し、辛亥革命に倒れた大帝国の輝きと崩壊をたどる。
現在の中華人民共和国の広大な国土は、大清帝国に由来している。では、この大領域を「北方の異民族」がいかにして手に入れ、維持したのか。また、漢人たちはこの「異民族支配」にどう対応したのか。康熙帝・雍正帝・乾隆帝が統治した清朝の最盛期から、アヘン戦争・日清戦争をへて、ラストエンペラー・溥儀、西太后、李鴻章、孫文らが登場する清末まで、栄光と苦闘の270年を描き出す。
清は「東アジアの帝国」であるより先に、「内陸アジアの帝国」だった。そして、チベットやモンゴル、さらに今日の新疆ウイグル自治区をふくむ「巨大な中国」を支えた理念は、「漢字と儒学」に代表される「中華文明」や「中華思想(華夷思想)」ではなく、チベット仏教だった。
台湾、琉球、朝鮮、そして日本――。清代末期の混乱のなかで「東アジア」の国々は何を共有し、何を争ってきたのか。「万里の長城」「天安門」が象徴する歴史の皮肉とは? 春節に賑わう横浜中華街を皮切りに、旧満洲、承徳、敦煌、ラサ、ソウル、台北など、各地を訪ね歩いた著者・平野氏は「清末の諸課題は、未だに解決されていない」という。
従来の中国史や現代中国論では見落とされがちだった、いまの中国が抱える「最大の矛盾」を解き明かし、「現代中国」を見る眼が変わる一冊。
[原本:『興亡の世界史17 大清帝国と中華の混迷』講談社 2007年刊]