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モンゴル帝国誕生

13世紀にユーラシアの東西を席巻したモンゴル帝国。その創始者、チンギス・カンは、質素倹約、質実剛健なリーダーだった。それを物語るのが、著者が近年、発掘成果をあげているチンギスの都、アウラガ遺跡である。良質の馬と鉄を手に入れ、道路網を整備することで、厳しい自然環境に生きるモンゴルの民の暮らしを支え続けたチンギスの実像を、さまざまな文献史料と、自然環境への科学的調査を踏まえ、気鋭の考古学者が描く。


13世紀にユーラシアの東西を席巻し、その後の世界史を大きく転換させたモンゴル帝国。ヨーロッパが世界を支配する以前に現出した「パックス・モンゴリカ」時代の、人類史における重要性は、近年、広く知られるようになった。しかし、ではなぜ、ユーラシア中央部に現れた小さな遊牧民のグループ、モンゴルにそれが可能だったのか、また、その創始者、チンギス・カンとは、いったいどんな人物だったのか、まだ多くの謎が残されている。本書では、20年以上にわたってモンゴルの遺跡を発掘し続けている著者が、この謎に挑む。
著者がフィールド・ワークから実感するチンギス・カンは、小説などでよく描かれる、果てしない草原を軽快に疾駆する「蒼き狼」、あるいは金銀財宝を手にした世界征服者――というイメージとは異なり、むしろ質素倹約を旨とする質実剛健なリーダーだという。その姿を明らかにしつつある近年の著者の発掘成果が、チンギスの都と目されるアウラガ遺跡である。
チンギスは、ただ戦争に明け暮れるだけでなく、この都をひとつの拠点に、良質の馬と鉄を手に入れ、道路網を整備していった。つまり、産業を創出し、交通インフラを整えることで、厳しい自然環境に生きるモンゴルの民の暮らしを支え続けたのである。その「意図せぬ世界征服」の結果として出現したのが、イェケ・モンゴル・ウルス=大モンゴル国、いわゆるモンゴル帝国であった。
さまざまな文献史料と、自然環境への科学的調査を踏まえ、気鋭の考古学者が新たに描き出すモンゴル帝国とチンギス・カンの実像。