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風俗小説論

花袋『蒲団』を一刀両断。明晰な論理で描く日本近代リアリズム興亡史ーー「『破戒』から『蒲団』にいたる道は滅びにいたる大道であったと云えましょう」。日露戦争の直後に起こった文壇の新気運のなかで、その後の日本文学の流れを決定づける2作品が誕生した。日本の近代リアリズムはいかに発生し、崩壊したのか。自然主義から誕生した私小説が、日本文学史に与えた衝撃を鋭利な分析力で解明し、後々まで影響を与えた、古典的名著。※本書は、1969年5月改版新潮文庫『風俗小説論』を底本としました。
〇千葉俊二 圧巻は何といっても小栗風葉の「青春」、島崎藤村の「破戒」、田山花袋の「蒲団」を取りあげながら、日本における「近代リアリズムの発生」を論じた最初の章である。中村は、誰にでも多くの可能性をはらんだ青春の一時期があるように、時代精神の巨大な流れのなかにもそうした時期があり、夏目漱石が「吾輩は猫である」を発表した一九〇五年から、花袋が「蒲団」を書いた一九〇七年までが、まさに明治文学史における青春期だったと指摘する。――<「解説」より>