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東北─不屈の歴史をひもとく

東北は過去に幾度となく天災、人災によって危機を味わってきた歴史をもつ。征夷大将軍・坂上田村麻呂の征戦以来、中央政府との対決につねに負けてきた「五戦五敗」の歴史という人もいる。だが、……必ず東北は立ち上がることができる。その証拠を歴史で示すのが本書のいちばんの目的だ。


宮戸島。2011年3月11日に発生した東日本大震災の最大被災地のひとつであり、俗に「奥松島」とよばれる地域です。
島内にある縄文時代の「里浜貝塚」(国史跡)は考古学の世界で規模の大きさで有名です。と同時に島内の地層から、縄文時代以来、複数回の大津波が起きたことがわかっています。そう、東北人の祖先は大災害を乗り越えて、ずっとこの地に生きつづけてきたのです。
一方、東北は過去に幾度となく西からの者たちによって危機を味わってきた歴史をもっています。征夷大将軍・坂上田村麻呂の征戦から戊辰戦争まで、中央政府との対決につねに負けてきた「五戦五敗」の歴史という人さえいます。
しかし、歴史はオセロゲームではありません。東北は、圧倒的な力の前に倒れても、そのたびに、必ず立ち上がってきました。業火のなかから不死鳥は蘇ります。今回は何度目の蘇りなのでしょうか、必ず東北は立ち上がることができます。その証拠を歴史に徴して明確に示すのが、本書のいちばんの目的です。
また、東北の縄文時代を自然と共生したユートピアのように高く評価する見かたも根強くあります。しかし、今次の大震災をみればわかるように、自然は恵みも災禍も両方をもたらします。東日本大震災を「千年に一度」と考えることは、これからしばらくは同じような大震災が起きないと思いこむ誤解も生むでしょう。理想論でなく、東北人はどのようにして荒ぶる自然と共生してきたのか、環境の変化は社会にどんな影響をもたらしたのか、人間の歩みと同時に天災の歴史についても追っていくのが、この本の第二の目的です。