「大いなる小屋 江戸歌舞伎の祝祭空間」既刊・関連作品一覧
櫓、看板、積物、衣裳、橋、桟敷、幕、鼠木戸、船、紋……神と魔が出現する「戯場国(けじょうこく)」を生む美意識と心性を徹底解明する最高・最良の劇場論!
江戸時代と現代の歌舞伎との断絶。その最たるものが、劇場空間と社会的位置づけの違いである。辺境にある「悪所」は噎(む)せ返るほどの祝祭性を発散し、役者と観客は渾然一体となって別天地に酔った。歴史学、民俗学、人類学などの知見も総動員し、江戸時代の芝居小屋を活写再現する。「紙の上に劇場を建てた」(渡辺保)と評された劇場空間論の決定版。
老中水野忠邦は……劇場を指して「大造ノ小屋」と称している……為政者の命名による「大造ノ小屋」とは「物」(建物)としての劇場を指していた。しかし、近世都市民の精神史にあって、この「小屋」は、「物」の大きさをはるかに超える大きな存在であった。彼らは、その独特な空間において役者の肉体が創り出す、目くるめく劇的宇宙を幻想し、憧憬し、体験することにより、これを「偉大なる小屋」に転換せしめた。それは「大いなる小屋」の名で呼ぶことこそもっともふさわしかった。(「芝居小屋論序説」より)
※本書は、1994年に刊行された『大いなる小屋――江戸歌舞伎の祝祭空間』(平凡社ライブラリー)を底本にし、新たに雑誌『歌舞伎 研究と批評』(歌舞伎学会、発売・雄山閣)に収録された対談を付録として追加しました。
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