「口福無限」既刊・関連作品一覧

  • 電子あり
口福無限

「人間共通の口福に対する貪欲がなくならない限り、食愛による発明は無限に続くだろう。そして大きく展けるだろう。」梔子や薔薇や牡丹の二杯酢<花肴>、胡麻油粥に金木犀の花びらをふりかけた<心平粥>、鶏卵の黄身の味噌漬け<満月>、海老のしっぽや魚の骨へのこだわり……。酒と美味を愛した昭和の大詩人・草野心平が、生活の折々に親しみ味わった珍味美肴の数々を詩情で掬って綴る、滋味溢れるエッセイ集。


天性の詩人が自在に綴る美味求真生きる歓び

「人間共通の口福に対する貪欲がなくならない限り、食愛による発明は無限に続くだろう。そして大きく展けるだろう。」梔子や薔薇や牡丹の二杯酢<花肴>、胡麻油粥に金木犀の花びらをふりかけた<心平粥>、鶏卵の黄身の味噌漬け<満月>、海老のしっぽや魚の骨へのこだわり……。酒と美味を愛した昭和の大詩人・草野心平が、生活の折々に親しみ味わった珍味美肴の数々を詩情で掬って綴る、滋味溢れるエッセイ集。

平松洋子
草野心平は一生をつうじて酒や食べものとも独自の関係をむすんでいた。蛙は蛙でありながら、ひとのすがたでもある。酒や食べものもまた、草野心平にとって「自然の讃嘆者」そのものであり、「プロレタリヤト」「アナルシスト」のためのものであり、「地べたに生きる天国」で実った恵みなのだ。酒を味わい、海山の味わいに舌鼓を打つとき、おれはここで生きているぞとよろこびの声を上げ、歓喜する草野心平のすがたがそこにある。――<「解説」より>