「チャップ・ブックの世界 近代イギリス庶民と廉価本」既刊・関連作品一覧
行商人が提供した本と読書の楽しみ、そして大衆文化への拡がり
18世紀のイギリスで、行商人チャップマンが日用品とともに売り歩いた素朴な廉価本――チャップ・ブック。安価で手軽に面白い話が読めることで、庶民に大いに愛された。占い、笑話、説教、犯罪実録、『ロビンソン・クルーソー』などの名作ダイジェスト……その多様なジャンルの読み物を人々はどう楽しんだのか。本の受容を通して、当時の庶民の暮らしぶりを生き生きと描き出す。
金に余裕のある上流階級や貴族はともかくとして、一般の労働者や庶民にとっては、いわば英文学の本道を行くような作品は高嶺の花だったと言うことができよう。1週間なり1ヵ月なりを飲まず食わずで過ごして本を買うなどというのは、恐らくよほどの酔興でなければ考えつかないことだったのである。その意味で、1ペニー、2ペンスという値段で買えるチャップ・ブックは、貴重な存在であった。――<本書より>
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