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ゴンチャローフ日本渡航記

ロシア文豪の眼に映る幕末日本の庶民の姿 会談ともてなしの風景

1853年8月、通商を求めるプチャーチン提督の秘書官として長崎に来航したゴンチャローフ。通詞を介しての奉行とのやりとり、さらに幕府全権・筒井政憲、川路聖謨らとの交渉が進められてゆく。傑作『オブローモフ』作者の目に、日本の風景、文化、庶民や役人の姿はどう映ったのか。鋭い観察眼と洞察力にユーモアを交え、芸術的に描かれる幕末模様。

日本人の間には2、3人の老人たちもいた。彼らは股引をはいていた。つまり、彼らの両足は上の方まで青い布地で包まれ、みんな同じ脚絆をつけ草鞋をはいていた。短い合羽もまた青色であった。「これは一体どういう連中ですか」とたずねると、「兵卒たちです」という。兵卒だと!わが国でいう兵卒とは、まるで正反対の思いもよらない代物である。――<本書より>

※本書は1969年刊『ゴンチャローフ日本渡航記』雄松堂出版を底本としました。