「夜明けの家」既刊・関連作品一覧
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古井文学の頂点を示す最高の連作集。
生死の間(あわい)を縫う最高の連作!どこへも、行きはしない。
生者と死者の静まりゆく50年。表題作をはじめ、名品「島の日」「不軽」「草原」等、古井文学の到達点!
若いのに腹の据わった女だ、とその始末の手際に舌を巻いた。夜の戸外の気温のことを考えると、老人の彷徨はその夏頃からのことだったのだろう。老人の出て行くのを寝床の中から耳にしながら女性はもう止めずにいる。(略)
老耄が人の自然なら、長年の死者が日々に生者となってもどるのも、老耄の自然ではないか。なぜ故人は死んでいて、自分は生きているのか、その区別が恣意のように感じられる時があっても不思議はない。殊に夜明け頃に生死の境はゆるむのだろう。寝覚めして境がゆるむのではなくて、境がゆるむので寝覚めする。故人を迎えに行かなくてはならない。──本文より
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