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月の塵

心にしみる音がききたい
父露伴ゆずりの好奇心と細やかな感性で日常を捉え自然をみつめる。いさぎよく豊かに生きた著者の晩年の清澄な心境を映すみずみずしい随筆58篇。

くらしの中にはたくさんの音がある。あり過ぎるからいちいちかまっていられなくて、自然に取捨選択して、必要な音にだけ注意する。それは当然だ。ただ、当然だけでなく、時にもう少し情感を上乗せしてみてはどうだろうか。私は楽しみをさがすような気持で、身辺の雑音に耳をたてる癖がついている。些細なことだが、これが案外おもしろく心に残ったりする。といっても私が特別にいい耳をもっているわけではないが、多分こういったら納得して頂けると思う。つまり私は、さがしたがりや、楽しみたがりやなのだ、と。──本文より