「影十手活殺帖」既刊・関連作品一覧
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遂に出た、新ヒーロー!
逃げ来たる女の背後にひそむ謎。青年和三郎の正義感と野村市助のユニークな眼差が光る新しい時代ミステリーの秀作!
石段の尽きるところに、樟の大樹が生えている。その樹下に佇む頬被りの女のもとへ、どうやら男は歩をすすめているようだ。男が石段をのぼりきると、女は頬被りをとった。
投島田の髷に縁取られたおもては、なかなかに美しいが、どこか妖しげに崩れたところがある。堅気の女ではあるまい。
「小春ゆうのは、あんさんか」
男の口調は苛立っている。
「よう来てくれはりましたなあ、紙治はん」
小春とよばれた女は、頭をさげた。
「馴れ馴れしゅうよばんといてんか。こっちは、あんさんがどこの何者んや知らんのさかいな」
「北の新地の女におます」――「入聟菊之丞」から
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