「御書物同心日記 虫姫」既刊・関連作品一覧

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御書物同心日記 虫姫

直木賞作家の新米司書物語、好評第3弾!
本の楽しさと江戸情緒を綴る7編

何百年も生きる将軍家御文庫の蔵書、それぞれに物語がある。

非番の新米同心丈太郎は、古本屋になりすまし、木場の旦那の家へ本の買い取りに出かける。ところが驟雨に見まわれ、雨宿りをした杉皮葺きの一軒家で虫姫に出会う。

無性に本の顔が見たくなった。
朝からずっと、ほとんど口を利かずに、表具師の手の動きを見つめている。
2日3日は丈太郎も物珍しく、また緊張もしていたが、4日5日とたつにつれ、いささか飽きてきた。書物を手にし、書物を見、書物の匂いを嗅げないのが、つらい。書物の禁断症状である。―――(本文より)