「すらすら読める南方録」既刊・関連作品一覧

すらすら読める南方録

千利休 茶の湯の秘伝書『南方録』から「覚書」を完全収録
総ルビつき原文/著者オリジナル現代語訳つき

「湯をわかし、茶をたてゝ、仏にそなへ、人にもほどこし、吾ものむ。花をたて香をたく」
日本独自の精神性と美意識がこめられた利休茶の思想は、現代人に心のありようを示してくれる。
一汁三菜を徹底した利休の主張する懐石は「食事は飢ぬほどにて たる事なり」というものであった。大徳寺の古渓宗陳和尚への参禅のたびごとに食したのであろう薬石としての精進料理が、利休の茶の精神と結びつき、それまでの茶事会席を大きく転換させ、わびを強調する新しい料理を生み出すにいたったことは想像にかたくない。禅僧が坐禅の際に懐に抱く温石(おんじゃく)は、胃の腑にあたかも食事をしたかのごとく感じさせる疑似体験の石であったといえる。一汁三菜の茶会料理を“懐石”と表現したのは、立花実山の『南方録』においてであった。――(本文より)