「どんどん橋、落ちた」既刊・関連作品一覧
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これぞ“騙し”の真骨頂。欺かるるなかれ!
必要な手がかりはすべて提出された。真相はたったひとつ。無類の稚気とフェア・プレイ精神あふれる綾辻流本格ミステリ、お待ちかねの最新傑作集!
ダブル・ミーニングという技法がある。ひとつの言葉に複数の意味あいを持たせることで、およそミステリでは飽きるほど繰り返し使われてきたテクニックである。この集に収められた一連の作品では、その技法が極限まで展開されている。そこに折りこまれた意味づけのダイナミック・レンジは、ミステリとしての作品それ自体をはみだして、著者個人の歩みや、彼が拓いた新本格というジャンルそのものにまで及んでいる。いわば、これらの作品は、彼自身とミステリに捧げられた哀悼の詩(うた)なのだ。だから、その意味でもこの連作集は、一見そうであるような愛すべき小品集でありながら、ミステリそのものの過去と現在と未来を透視し、封印した、綾辻行人〈中期〉の劈頭を飾る代表作というべきなのである。──竹本健治