21世紀の「第三次形而上学革命」を迎えるにあたり、旧石器人類の思考、国家の誕生、貨幣の発生、神の創造と一神教の成立まで、「超越的なもの」について、人類が考え得た全領域を踏破することをめざした伝説の講義録が、愛蔵版として装いも新たに登場!
「神話」とは、人類が最初に考え出した、最古の哲学です。今日の「哲学」は、神話が切り開いた領土で、自然児の大胆さを失った慎重な足取りで進められた後追いの試みでしかないのではないかと思われるほど、神話には根源的な問いに対する人類の果敢な試みが保存されています。
神話を学ばないということは、人間を学ばないということにほとんど等しいかと思われるのです。
本書は、神話の持つ深遠な意味と神話で働く「感覚の論理」のイントロから始まります。
そして、神話がいかに歴史的・地理的な広がりを持っているか、そしてどのように「変形」を受けながら、伝播していくかを探ります。
実は、私たちの誰もが知っている「シンデレラ物語」も、本家フランスのシャルル・ペローによる物語だけでなく、グリム版、ポルトガル版、トルコ・ギリシャ地方、そして中国の唐代に書かれた『酉陽雑俎(ゆうようざっそ)』似た物語が存在しているのです。それぞれには、貧しく不幸な女の子が結婚というハッピー・エンドに至るという構造があります。
ヨーロッパ系のシンデレラ物語は、「外見的なものへの欲望」をひたすら追い求め、社会的仲介機能である結婚によりすぎているのではないでしょうか。アメリカ先住民のミクマク・インディアンは、ヨーロッパ伝来の「シンデレラ物語」をもとに、より精神性の高い「シンデレラ物語」を創り出しました。気高い魂を持つ「見えない人」のもとに竈の近くで焼けた髪と肌のまま、父からもらったぶかぶかの古いモカシン靴で出かけます。そこで見えない人は、彼女の美しい心に気づき、結婚へと至ります。
ところで、シンデレラたちは、なぜ靴が、片足だったり、ぶかぶかだったりするのでしょうか?
ここには、オイディプス神話に通じる「死者」との交通という気の遠くなるような古代性へと私たちを誘うのです。
スリリングな知的冒険が、この本にはあります!
【目次】より
はじめに カイエ・ソバージュ(Cahier Sauvage)について
序章 はじまりの哲学
第一章 人類的分布をする神話の謎
第二章 神話論理の好物
第三章 神話としてのシンデレラ
第四章 原シンデレラのほうへ
第五章 中国のシンデレラ
第六章 シンデレラに抗するシンデレラ
第七章 片方の靴の謎
終章 神話と現実
索引
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