エッセンシャル植物育種学 農学系のための基礎

エッセンシャルショクブツイクシュガクノウガクケイノタメノキソ
著・編:國武 久登 著・編:執行 正義 著・編:平野 智也 著:神戸 敏成 著:貴島 祐治 著:三吉 一光 著:大谷 基泰 著:八幡 昌紀 著:星野 洋一郎 著:中野 優 著:佐々 英徳 著:三柴 啓一郎 著:山本 伸一
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エッセンシャル植物育種学 農学系のための基礎
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内容紹介

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目次

  • 第1章 植物育種の歴史
  • 1.1 世界人口と食料生産の課題
  • 1.2 栽培植物はこうして生まれた
  • 1.3 メンデルの法則の再発見がもたらしたもの
  • 1.4 交雑育種の効率が高まる
  • 1.5 革新的な育種に向けたプロローグ
  • 第2章 植物遺伝資源と育種
  • 2.1 植物遺伝資源とは
  • 2.2 栽培植物の起源
  • 2.3 植物遺伝資源の収集
  • 第3章 遺伝学の基礎
  • 3.1 メンデルの実験と遺伝の法則
  • 3.2 遺伝子型と表現型の多様な関係
  • 3.3 染色体の分配と遺伝子の継承
  • 3.4 量的形質の遺伝
  • 3.5 エピジェネティクス
  • 第4章 育種の原理と基本的な技術
  • 4.1 植物における育種の定義
  • 4.2 育種の対象となる植物の分類
  • 4.3 植物の生殖様式と繁殖様式
  • 4.4 育種の方法および流れ
  • 4.5 品種の変遷
  • 4.6 育種方法の概観
  • 4.7 育種目標
  • 第5章 他殖性植物の育種
  • 5.1 他殖性植物の繁殖様式:他家受精の機構
  • 5.2 近交弱勢と雑種強勢
  • 5.3 集団選抜法
  • 5.4 合成品種育種法
  • 5.5 循環選抜法
  • 5.6 雄性不稔を利用した一代雑種育種法
  • 5.7 他殖性植物の育種の実例
  • 第6章 一代雑種育種
  • 6.1 一代雑種育種(F1育種)および一代雑種品種(F1品種)の特徴
  • 6.2 F1育種の方法
  • 6.3 一代雑種種子(F1種子)の生産方法
  • 6.4 F1育種の実例
  • 第7章 自殖性植物の育種
  • 7.1 自殖性植物の特性と由来
  • 7.2 自殖性植物の育種法
  • 第8章 栄養繁殖性植物の育種
  • 8.1 栄養繁殖性植物の遺伝的特徴
  • 8.2 栄養繁殖性植物の交雑育種
  • 8.3 突然変異体の選抜
  • 第9章 ゲノムおよび倍数性育種
  • 9.1 植物の染色体数と倍数性
  • 9.2 ゲノム分析と核型分析
  • 9.3 倍数体の作出方法
  • 9.4 同質倍数体と異質倍数体
  • 9.5 半数体・倍加半数体
  • 9.6 異数体
  • 第10章 突然変異育種
  • 10.1 突然変異の種類と規模
  • 10.2 変異原による突然変異誘発
  • 10.3 突然変異の発生部位
  • 10.4 突然変異体の選抜
  • 10.5 遺伝資源としての突然変異体
  • 10.6 突然変異育種の実例
  • 第11章 遠縁交雑育種
  • 11.1 生殖的隔離とは
  • 11.2 生殖的隔離機構の評価
  • 11.3 遠縁交雑と複二倍体
  • 11.4 遠縁交雑育種の実例
  • 第12章 組織培養による育種
  • 12.1 植物の全能性
  • 12.2 植物成長調節物質による分化・脱分化の制御
  • 12.3 組織培養技術
  • 12.4 葯培養および花粉培養
  • 12.5 ソマクローナル変異による育種
  • 12.6 プロトプラスト培養および細胞融合による育種
  • 第13章 分子育種の基礎
  • 13.1 遺伝子のクローニング
  • 13.2 植物におけるゲノム解析
  • 13.3 育種に利用される遺伝子
  • 第14章 分子育種の実際
  • 14.1 DNAマーカー育種
  • 14.2 遺伝子組換え・ゲノム編集
  • 第15章 遺伝資源を取り巻く情勢

製品情報

製品名 エッセンシャル植物育種学 農学系のための基礎
著者名 著・編:國武 久登 著・編:執行 正義 著・編:平野 智也 著:神戸 敏成 著:貴島 祐治 著:三吉 一光 著:大谷 基泰 著:八幡 昌紀 著:星野 洋一郎 著:中野 優 著:佐々 英徳 著:三柴 啓一郎 著:山本 伸一
発売日 2023年05月15日
価格 定価:3,740円(本体3,400円)
ISBN 978-4-06-530815-8
判型 B5
ページ数 288ページ

著者紹介

著・編:國武 久登(クニタケ ヒサト)

学術博士。1991年千葉大学大学院自然科学研究科博士課程修了。1996年より九州東海大学農学部講師,2001年より宮崎大学農学部応用生物科学科准教授を経て,2006年より宮崎大学農学部応用生物科学科教授。2015年より宮崎大学副学長(産学連携担当),2021年より宮崎大学農学部長を兼務。専門は植物遺伝育種学,果樹園芸学。単著『家庭果樹』(NHK出版,2009),『よくわかる栽培12ヶ月 ラズベリー・ブラックベリー』(日本放送出版協会,2006)。監修・共著『育てて味わうまるごとベリー』(日本放送出版協会,2004)。
【読者へのメッセージ】
世界人口の約1割にあたる8億人が「飢餓」で苦しみ,20億人以上が安全で栄養のある十分な量の食料を得られない現状にあります。各地で起こっている紛争により豊かな食料生産地帯は破壊され,世界の食料事情は一変しつつあります。このような状況のなか,植物育種は生産者や消費者の多様なニーズに迅速に対応できることがこれまで以上に強く求められています。本書をきっかけに新たな植物を創るサイエンスに挑む学生や若い研究者が増えることを期待しています。

著・編:執行 正義(シギョウ マサヨシ)

博士(農学)。1997年鹿児島大学大学院連合農学研究科博士課程修了。1999年より山口大学農学部助教授,2010年より山口大学農学部准教授を経て,2017年より山口大学大学院創成科学研究科教授。専門は植物遺伝育種学,野菜園芸学。
【読者へのメッセージ】
メンデルの法則,減数分裂,染色体が頭の中でつながっていなかった高校時代を過ごした私にとって,生物学は本当に興味のない学問分野でした。大学の卒業論文研究で,多くの人たちが嫌がる交配,交雑個体育成,染色体観察を一通り行った後に,上記のすべての事象がタペストリーのように見事に連結し,そこから私の農学研究がスタートしました。古典遺伝学の理解は本来,このような厄介な一連の実験の経験によって進んでいきます。ゲノム編集のような最新技術を駆使しても,すぐに品種が育成できるわけではなく,種子増殖を考えると,古典遺伝学に立ち返らざるを得ません。本書では,古典遺伝学の部分をできるだけわかりやすく記したつもりです。本書を読みつつ,上記のような厄介な実験を進めてみると,素早く植物育種学の本質を見いだせると期待しています。

著・編:平野 智也(ヒラノ トモナリ)

博士(農学)。2006年千葉大学大学院自然科学研究科博士課程修了。北海道大学創成科学共同研究機構学術研究員,理化学研究所イノベーション推進センター研究員などを経て,2014年より宮崎大学農学部応用生物科学科准教授。専門は植物遺伝育種学,花卉園芸学。
【読者へのメッセージ】
植物育種,植物に関する研究に携わるなかで,いまだにワクワクする気持ちが研究の原動力となっていると感じます。本書には新しい植物が世に出ていく一連の過程での発見や苦労,発想の転換などさまざまなエッセンスが含まれていて,植物育種学を学べると同時にいろいろな刺激が得られるのではないかと思います。本書に出てきた植物に興味を持ったら,ぜひ実際に見て触って,可能であれば育ててみてください。皆さんの興味がよりかき立てられて,学びの原動力になると思います。

著:神戸 敏成(ゴウド トシナリ)

博士(農学)。1990年千葉大学大学院園芸学研究科修士課程修了。1990年より味の素株式会社基礎研究所研究員,1994年より富山県中央植物園研究員,富山県中央植物園企画情報課長を経て,2019年より龍谷大学農学部資源生物科学科教授。2023年より龍谷大学農学部農学科教授,2021年より龍谷大学農場長を兼務。専門は植物資源学,花卉園芸学。
【読者へのメッセージ】
皆さんの身の回りを見渡してみてください。私たちの生活がたくさんの植物によって支えられていることに気づくと思います。これらの植物は,長い年月をかけて植物資源の多様性を利用して育種されてきました。植物育種によって改良されてきた作物は地球上の増大する人口の食生活を支えるだけではなく,生活に豊かさや彩りを与えてきました。しかし,温暖化に代表される地球環境の変化や開発などにより育種のもととなる植物資源の多様性は急速に失われつつあり,植物資源の多様性の保全と持続的利用は,世界的な課題になっています。この本を手に取った皆さんが,少しでもこの課題に興味を持っていただければ幸いです。

著:貴島 祐治(キシマ ユウジ)

農学博士。1988年北海道大学大学院農学研究科博士後期課程単位取得退学。1988年より宮崎大学農学部助手,1995年より北海道大学農学部講師を経て,1998年より北海道大学農学部助教授。2007年より北海道大学大学院農学研究院准教授を経て,2011年より北海道大学大学院農学研究院教授。専門は植物育種学。
【読者へのメッセージ】
従来の植物育種では,確かな経験に基づいた方法が優良な品種を育成する鍵でした。今世紀に入って分子遺伝学やゲノム科学の進展により,机上の空論だと考えられていた方法論が,育種現場で実践できるようになりました。育種技術の進歩は,植物の品種改良の潜在性を高め,植物の利用価値を多様化します。人類の営みを支えてきた育種が今後もさまざまな問題解決に貢献することを願いつつ,それに興味を示す人材の幾ばくかの参考になれば幸いです。

著:三吉 一光(ミヨシ カズミツ)

農学博士。1982年千葉大学大学院園芸学研究科修士課程修了,1987年東北大学大学院農学研究科博士課程修了。株式会社サカタのタネ情報科科長,理化学研究所協力研究員,秋田県立大学准教授を経て,2012年から千葉大学大学院園芸学研究科教授,2021年より千葉大学大学院園芸学研究院教授。専門は育種学,花卉園芸学,種子生物学。
【読者へのメッセージ】
我が国の園芸作物の農業生産額は,コメなどの穀類の総計を大きく上回り,今や日本は《コメの国》から《園芸の国》に変わりつつあります。しかし,野菜や花の多くの品目において,育種が農業生産上,重要な役割を果たしていることも世間では十分に認識されていません。さらに,従来の育種学の教科書でも,F1育種をはじめとした花卉や野菜の育種についての記述は限定的でした。担当した章では,多様性が大きな特徴の一つである園芸作物においては,育種もさまざまな特徴をもっていることを理解していただこうと思いました。この教科書を読んで,園芸植物の育種に興味を持っていただき,さらに育種によって《園芸立国》を目指す人があらわれれば私にとっては望外の喜びです。

著:大谷 基泰(オオタニ モトヤス)

博士(農学)。1990年千葉大学大学院自然科学研究科博士課程中退。1990年より石川県農業短期大学助手,1997年より石川県農業短期大学助教授,2005年より石川県立大学生物資源環境学部准教授。専門は植物細胞育種学。
【読者へのメッセージ】
新品種を世に送り出すことは新たな産業を生み出す可能性もあります。近年,「植物育種」は単に農業の発展に寄与するだけではなく,環境や工業,医療などさまざまな分野にも関わるようになってきています。本書が有用な新品種育成の一助になれば幸いです。

著:八幡 昌紀(ヤハタ マサキ)

博士(農学)。2006年3月鹿児島大学大学院連合農学科博士課程修了。2005年9月に静岡大学農学部附属地域フィールド科学教育研究センター助手として着任後,2007年4月より助教,2014年1月より准教授を経て,2015年4月より静岡大学学術院農学領域准教授。専門は果樹園芸学,植物遺伝育種学。
【読者へのメッセージ】
私は静岡県特産のカンキツ類をはじめ,スモモ,キウイフルーツ,ブルーベリーなどのさまざまな果樹を用いて,結実・成熟生理に関する研究ならびに染色体工学的手法による果樹の品種改良を行っています。本書を読んで,「植物育種は面白い。もっと知りたい。」と感じたら,どんな植物でもいいですのでまず種を播いて育ててみてください。植物を育てていくといろんな発見が待っていて,あなたを植物育種の世界に導いてくれるでしょう。

著:星野 洋一郎(ホシノ ヨウイチロウ)

博士(学術)。1998年千葉大学大学院自然科学研究科博士課程修了。1998年より北海道大学農学部附属農場助手,2001年北海道大学北方生物圏フィールド科学センター助手,2012年同准教授を経て,2020年より北海道大学北方生物圏フィールド科学センター教授。専門は園芸学,育種学。
【読者へのメッセージ】
日々の観察や研究の中で,1つの花粉から二本の花粉管が出ていることに刮目し,五倍性の胚乳をもつ植物の存在に驚き,種間雑種に果実がなって喜び,植物の多様な姿に魅了されてきました。植物のもつ多様な姿の断片を切り取って紹介できればと考えました。本書が小さな気づきのきっかけとなればうれしく思います。

著:中野 優(ナカノ マサル)

博士(学術)。1993年千葉大学大学院自然科学研究科博士課程修了。1994年より新潟大学大学院自然科学研究科助手を経て,2017年より新潟大学農学部農学科教授。専門は,植物細胞工学および花卉園芸学。
【読者へのメッセージ】
植物の種類は非常に多く,また,同じ種類の植物であってもその特徴には大きな多様性がみられます。さらに,植物育種により多様性をいっそう拡大させることができます。本書が,植物そのものや植物の遺伝・育種に興味をもつきっかけとなれば,非常にうれしく思います。

著:佐々 英徳(サッサ ヒデノリ)

博士(学術)。1995年千葉大学大学院自然科学研究科博士課程修了。1997年より横浜市立大学木原生物学研究所助手,2005年より千葉大学園芸学部園芸学科助教授を経て,2017年より千葉大学大学院園芸学研究科園芸科学コース教授。専門は植物遺伝育種学。
【読者へのメッセージ】
植物育種は新しい植物を生み出す,夢のある技術です。ゲノム編集という,しばらく前には考えられなかったほど簡単・正確に遺伝子を操作する方法も開発され,育種にできることはどんどん広がっています。育種学は応用科学で,遺伝学はもちろん,植物学,分子生物学,生化学,統計学など,さまざまな学問分野に関係があります。本書で育種学の基礎を学ぶと同時に,さまざまな関連分野にも目を向け,勉強していただけたらと思います。

著:三柴 啓一郎(ミシバ ケイイチロウ)

博士(農学)。2000年千葉大学大学院自然科学研究科博士課程修了。農林水産特別研究員,岩手生物工学研究センター研究員,大阪府立大学大学院生命環境科学研究科助手,助教,准教授を経て,2021年より龍谷大学農学部資源生物科学科教授。2023年より龍谷大学農学部農学科教授。専門は植物育種学,植物分子育種学。
【読者へのメッセージ】
私たち人類は,およそ1万年前に農業社会へ移行してから植物を改良(つまり育種)してきました。身近な作物や野菜のもとになった野生種を調べてみると,育種が私たちの生活にどれだけ貢献してきたかが想像できると思います。

著:山本 伸一(ヤマモト シンイチ)

博士(農学)。1998年東京大学大学院農学生命科学研究科博士課程単位取得退学。1998年農林水産省 農業生物資源研究所分子遺伝部研究員。2001年の独立行政法人化後,2010年よりジーンバンク主任研究員。2016年法人合併により国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)遺伝資源センター上級研究員。農研機構本部勤務を経て,現在は改組により農研機構基盤技術研究本部遺伝資源研究センターに所属。専門は遺伝資源保全学,低温生物学,植物育種学。
【読者へのメッセージ】
植物育種は食料安全保障や地球環境問題を解決するための大きなポテンシャルをもっており,その基礎となるのが多様な遺伝資源です。生物多様性の保全と利用については重要ながらも地味な分野でしたが,昨今ローカル,グローバルともに注目が集まっており,今後ますます重要性が高まると考えられます。特に利用に関しては,あまり馴染みがないかもしれませんが,法規制の最新情報を知ることが必要です。本書を端緒として興味を持ち,学びを広げて理解を深め,遺伝資源を適切に活用されることを期待します。

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