鉄道、軍艦、金鉱、教育、選挙……これが西洋というものか!
幕末の志士に影響を与えたと言われる驚異の見聞記。
信頼性が高い写本をベースにした、読みやすい訳文での文庫訳し下ろし。
1841(天保12)年、万次郎ら土佐の漁師たち5名は、嵐に襲われ太平洋上の小島に漂着する。絶望的な状況の彼らを救ったのは、星条旗を掲げた捕鯨船ジョン・ハウランド号だった。ハワイに連れられた一行であったが、船長に才を愛でられた万次郎は、さらに合衆国本土へと向かう。アメリカという国で万次郎は、鉄道、建築、戦争、経済、教育、民主主義……つまり西洋近代と出会うことになった。英語を身につけ、学校で学び、金鉱で費用を稼ぎ、その末に彼は、ついに帰国を果たす。そして、土佐藩によって聴取をうけた万次郎は、その10年にわたる、奇跡と苦闘の顛末を語った――。
坂本龍馬をめぐる物語でもおなじみ、土佐藩の絵師にして思想家でもあった河田小龍が、帰還した万次郎に事情を聴取した際の記録、その完全現代語訳。土佐の若き漁師が、遭難を生きのび、アメリカという未知の社会で逞しく育ち、そして仲間とともに日本への帰還を果たすまで、読む者にいまなお大きな印象を残す証言です。絵師・河田が万次郎の言葉から描き起こした諸々の文物の図版も見どころ。
本書の内容、とくに選挙による民主的な大統領選出などの近代市民社会のありようや、蒸気機関と鉄道などについての記録は、幕末維新の人々に西洋近代のイメージを残したと言われます。
本書は、内容体裁がもっとも整っていると言われる完全写本のひとつ「穂之久爾本」の翻刻である高知市民図書館版を完全現代語訳、訳し下ろし。信頼性が高い写本をベースにした、読みやすい訳文での文庫化です。
【本書の内容】
巻之一
巻之二 伝蔵と五右衛門兄弟、苦労して帰国を図る話
巻之三 伝蔵たち四人と別れた万次郎がアメリカ合衆国に入り、のちに諸洋を航海する話
巻之四 万次郎、伝蔵と五右衛門をうながしていっしょに帰国を果たす話
解題・北代淳二
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