「あの子を助けられるのは、あなたしかいないんです」--性犯罪や、余命の告知。男女のつらい過去を、時を遡って変える力をもつ娼婦のなぎさ。二十五歳で、恋人の真知子との結婚も決まった宏が受けた、ガン告知。自暴自棄になる宏だが、真知子自身のために、真知子との関係を断ち切りたいと望む。そこに現れたなぎさは言う。「真知子さんを本気で救いたいなら、わたしを抱いて」。
1963年岡山県生まれ。早稲田大学教育学部卒業。出版社勤務を経て、執筆活動に入る。1999年『ナイフ』で坪田譲治文学賞、『エイジ』で山本周五郎賞、2001年『ビタミンF』で直木賞、2010年『十字架』で吉川英治文学賞、2014年に『ゼツメツ少年』で毎日出版文化賞をそれぞれ受賞。小説作品に『流星ワゴン』『愛妻日記』『カシオペアの丘で』『赤ヘル1975』など多数。