戦後、焼け跡のなかで育ち、国民的歌手となった美空ひばりの人生に迫ったノンフィクション。だが、著者が書きたかったのは、ひばりだけではない。著者は、日本人について「敗戦後、お互いに貧しくはあったが、自由で生々としていた。いまは、進行する管理体制の下で不自由をかこち合い、人間性を失ってきている。このような状況でこそ、私たちは『戦後』を見直さなければならない」と指摘。ひばりが生きた戦後こそがテーマなのだ
1933年、旧朝鮮・京城生まれ。早稲田大学政治経済学部新聞学科を卒業後、55年に読売新聞社入社。社会部記者、ニューヨーク特派員などとして活躍。とくに精力を傾けた「『黄色い血』追放キャンペーン」では、日本の献血制度確立に多大な貢献を果たす。71年に退社し、フリーのノンフィクション作家となる。84年には、先輩記者・立松和博氏が検察内部の権力闘争に巻き込まれて逮捕され、新聞社が弱体化し変質してゆく姿を描いた『不当逮捕』で、講談社ノンフィクション賞を受賞する。主な作品に『誘拐』『私戦』『村が消えた』『疵 花形敬とその時代』『我、拗ね者として生涯を閉ず』など。2004年12月、多臓器不全のため死亡。享年71