江戸は神田三河町の小児医・天野三哲は、「面倒臭ぇ」が口癖。朝寝坊はする、患者は待たせる、面倒になると逃げ出す、ついたあだ名が「藪のふらここ堂」だ。ところがこの先生、見えないところで凄腕を発揮するらしい。三哲に振り回されながらも診療を手伝う娘のおゆん、弟子たち、ふらここ堂の面々の日常と騒動を描く!
天野三哲は、江戸・神田三河町で開業している小児医。「面倒臭ぇ」が口癖で、朝寝坊する、患者を選り好みする、面倒になると患者を置いて逃げ出しちまう、近所でも有名な藪医者だ。ところが、ひょんなことから患者が押し寄せてくるように。三哲の娘・おゆん、弟子の次郎助、凄腕産婆のお亀婆さん、男前の薬種商・佐吉など、周囲の面々を巻き込んで、ふらここ堂はスッタモンダの大騒ぎに!
三哲の前には、嫁姑の不仲で命を落としかける赤子や、関係が密着し過ぎた母娘らが次々現れる。人情味あふれる長屋の住人たちも、時として他人にはうかがい知れぬ人生の暗部をさらす。正と邪、善と悪を同時に抱えているのが人間。
「人は真っすぐ善に向かって成長するわけではないし、悪は強さの裏打ちかもしれない。常にふらここ(=ブランコ)のように不安定な状態で、私たちは奇跡的にバランスを取って生きている」(著者)
とらえどころがないリアルな人間の暮らしぶりを季節感豊かに、人情たっぷりに描いた傑作時代小説。
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