ラテン文学黄金期を支えた詩人クイントゥス・ホラーティウス・フラックス(前65-前8年)の代表作、文庫では初となる全訳決定版が完成。後世に連なる伝統を創始した「韻文による書簡」という形式を確立するとともに、『詩論(アルス・ポエティカ)』の名で独立した著作としても読み継がれてきた部分を含む不朽の名著が、名手による清新な日本語で甦る。西欧文化の源流に燦然と輝く古典を今こそ読む!
古代ローマを代表する詩人クイントゥス・ホラーティウス・フラックス(前65-前8年)の代表作、待望の新訳登場。
南イタリアのウェヌシアで生まれたホラーティウスは、アテーナイに留学して学問を身につけたあと、カエサル暗殺を機に勃発したローマの内乱を迎えた。暗殺者ブルートゥスが率いる共和派に加わって軍団士官として戦ったものの、敗戦を経験。これが詩作を始めるきっかけになった。
そして、『諷刺詩』全2巻(前35頃-30年頃公刊)、『エポーディー』(前30年頃公刊)、『カルミナ』全4巻(前23-13年公刊)など、多彩な詩作を生み出し、ウェルギリウスと並び称されるラテン文学黄金期を支えた詩人となる。
本書は、そのホラーティウスが前20あるいは19年頃に第1巻(全20歌)を、そのあとしばらく間を置いて第2巻(全3歌)を執筆した代表作である。さまざまな人物に宛てられた書簡を韻文で書く、という本書の試みは、オウィディウスをはじめ、後世のユスターシュ・デシャン、ペトラルカ、ジョン・ダン、ラ・フォンテーヌ、さらには18世紀のヴォルテールらにまで至る「書簡詩」の伝統を創始した。
本書の白眉は、第2巻第3歌である。これは伝統的に『詩論(Ars poetica)』の名で呼ばれ、単独の著作としても流通し、広く読まれた。アリストテレスの『詩学』と並び、後世に計り知れぬ影響を与えた不朽の一篇となっている。
韻文ならではの技巧を凝らした書簡の数々を、名手が清新な日本語にする。『書簡詩』の全訳としては初の文庫版となる本書は、まさに決定版の名にふさわしい1冊である。
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