内容紹介
日本人にとって「軍隊」とはなんだったのか。大日本帝国軍隊は、天皇に直隷するまさに「天皇の軍隊」であった。天皇は軍人の「頭首」として、斃れた将兵の魂魄を守る者としても存在した。しかし、天皇の名による軍隊生活の実態とは…。徴兵の恐怖感、凄惨な私的制裁、兵士たちの性生活と花柳病、遺された家族の貞操…。戦争が長期化するなかで、軍隊は大衆化し、軍官僚は肥大化して「天皇の軍隊」は大きく変質していった。
日本人にとって「軍隊」とはいかなるものだったのか。1945年の敗戦を経過した現代人にとって、「軍隊の記憶」は、明治国家の亡霊を引きずり続けたために、あまりにもばっさりと切り捨てられたかの感がある。しかし、「天皇制軍国主義」という「自明の理」をよりどころに、その封建的体質を指弾するのみでは、近代日本の軍隊の実像はとらえきれない、と著者はいう。
大日本帝国軍隊は、明治建軍から敗戦に至るまで、天皇に直隷し、天皇の統帥下に、その御稜威(みいつ)を世界に輝かせようとした「皇軍」であり、まさに「天皇の軍隊」であった。天皇は軍人の「頭首」として、斃れた将兵を強く意識し、その魂魄を守る者としても存在した。また、こうした天皇像をとおして、兵士は天皇との情誼的一体感を持ち得たのである。
しかし、天皇の名による軍隊生活の実態はどうだったか。本書では、兵士たちの日記や書簡等を多く取り上げ、民衆の原像たる兵士の姿を明らかにする。徴兵の恐怖と「徴兵のがれ」の実相、凄惨な私的制裁、兵士たちの性生活と花柳病、遺された家族の貞操…。戦争が長期化するなかで、軍隊は大衆化し、軍官僚は肥大化して「天皇の軍隊」はおおきく変質していく。
〔1978年、教育社刊の同名書籍の文庫化〕
目次
- はじめに
- 概観
- 第一章 「国民皆兵」の虚実
- 第二章 兵営への途
- 第三章 兵営生活の虚実
- 第四章 天皇と「股肱の臣」
- 第五章 兵士たちの素顔
- 第六章 出征兵士と遺家族
- 第七章 「皇軍」哀歌
- 文献解題
- 陸軍常備団隊配備表
製品情報
製品名 | 天皇の軍隊 |
---|---|
著者名 | 著:大濱 徹也 |
発売日 | 2015年06月11日 |
価格 | 定価 : 本体820円(税別) |
ISBN | 978-4-06-292302-6 |
通巻番号 | 2302 |
判型 | A6 |
ページ数 | 232ページ |
シリーズ | 講談社学術文庫 |
初出 | 本書の原本は、1978年に教育社から、その後ニュートンプレスから刊行されました。 |
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