石川啄木が友人の金田一京助宛に、長男の死を告げながら葬儀用に羽織袴の借用を頼む手紙。夏目漱石が饅頭を貰ったことへの礼状に、饅頭の俳句を添えて。内田百けんが借金を請う無心状。谷崎潤一郎の赤裸々な恋文。太宰治が芥川賞を懇願する手紙。福沢諭吉が我が子に送った人生のアドバイス。正岡子規が弟子の高浜虚子に与えた厳しい訓戒。二葉亭四迷、森鴎外の遺書……。一通の手紙に表れる作家の知られざる素顔や、作家同士の興味深い交友関係。名編集者・江國滋が86通の手紙を厳選し、手紙の内容ごとに寸評を加えたアンソロジー。巻末解説・斎藤美奈子。