「自然」を愛し、「人生」に苦悩した明治の青春
明治元年生まれ、昭和2年没。理想を求め、現実に躓き、なお人として良き道を往くべく苦闘した蘆花。熊本での幼少期、身近に砲声を聴いた西南戦争を背景に、ある一家の悲劇を描く「灰燼」、貧者救済を己に課し、異国で死ぬうら若い女性の凛とした生き方を、キリスト者の求道と人間的悩みの両面から描く「梅一輪」、農的生活の実践論「美的百姓」等、近代日本の光と影を一身に体現する蘆花文学の精髄24篇。
吉田正信
蘆花は大衆的なだけではなく、選べば作品の質も高い。文学を美的言語形象による人間学という基本に立って見直せば、蘆花はその後の文壇が回避して文学をひ弱なものにした大事なものを、秘めている。(中略)蘆花没後80年という適度なへだたりをえた今、蘆花の文学と人間は、読者の素直な眼による再評価を待っている。――<「解説」より>
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