内容紹介
実は、いじめを受けていた小中学校時代。就職活動では民放の入社試験に落ちまくり、なんとか入れたNHK時代、街中では「嘘つき」と怒鳴られ、社内では「給料泥棒」呼ばわりされた。会議では「黙って原稿を読めばいい」「打ち合わせにないことはやるな」と叱責されたこともあった。それでもくじけず、あきらめなかった理由とは何か。元NHKアナウンサー、堀潤の発想と行動の「原点」――。(講談社現代新書)
NHKのアナウンサーの多くはあらかじめ決められた段取りに従い、リハーサルを何回もしてから本番に臨むというように、決まりきったことしかやらないし、台本に書かれていないことはまず話さない。
そのため、番組では生放送が発するようなハプニング感は感じられないし、中継番組もどこか漂白された感を否めない。
僕にとっては、それがおもしろくなかった。
(中略)
あるお祭りの中継で、実行委員会のAさんに話を聞くシーンでのこと。
彼は、途中までは台本を覚えていたのだろう。
ペラペラと話すことができたが、ある時点で言葉に詰まり、続くはずのコメントが出なくなってしまった。
通常、NHKのアナウンサーならこんな時、「つまり、○○ということですよね?」などと言って必死に取り繕おうとする。
結果、その場には微妙な空気が漂う。
その気まずい雰囲気は、テレビの前のみなさんにも伝わってしまうものだ。
だからその時、僕はこうフォローした。
「Aさん、台本を一緒に読みましょうか。リハーサルしていても、生放送はやっぱり緊張しますよね」
とにかく楽しい放送をしたかった。
嘘をつき、取り繕い、いいように見せかける放送ではなく、正直な放送をしたかった。
だからこそ、こんなふうにテレビの裏側を「ド正直」に流す手法を僕は心がけてきた。(「第1章」より)
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いじめを受けていた小学校時代のあだ名は、「なんでやねん君」。
バイオリンを習わされていた著者は半ズボンを履き、襟付きのシャツを着ていた大人しい「お坊ちゃん」でしかなかった。
就職活動では民放の入社試験に落ちまくり、なんとか入れたNHK時代、街中では「嘘つき」と怒鳴られ、社内では「給料泥棒」呼ばわりされたことがあった。
会議では「黙って原稿を読めばいい」「打ち合わせにないことはやるな」と叱責されたこともあった。
それでもくじけず、あきらめなかった理由とは何か。
元NHKアナウンサー、堀潤の発想と行動の「原点」――。
目次
- 第一章 NHKで学んだこと
- 泊まり込みの新人研修/実は落ちまくっていた民放の入社試験/「アナウンサー声」の身につけ方/ニュース原稿を読む難しさ/アナウンサーがいちばん怖れること/公共放送の果たすべき役割/NHKの地方局ならではの仕事/「嘘つき」と怒鳴られて/視聴者への裏切りは謝罪すべき/NHKにとっての伝統や革新とは/いいように取り繕う放送はしたくない/急転直下の異動 ほか
- 第二章 僕がカメラに背を向けた理由
- 「チャラチャラしたヤツは現場に行かせない」/「給料泥棒」と呼ばれて/「早く成果を出そうとあせるな」/笑い顔でレポートするな/現場感を伝えるための工夫/「ワンカメ中継」の狙い/『ニュース7』との違い/ストーリーに合ったコメントを欲しがる番組作り/ニュース番組の限界/「ローカル放送じゃないんだ」/物事を一面的には捉えない/「人々に寄り添う」報道への疑問/見逃さなかった一瞬 ほか
- 第三章 果たせなかったメディアの責任
- 大企業目線だった『Bizスポ』/「黙って原稿を読めばいい」「打ち合わせにないことはやるな」/ニュース原稿を読むだけのキャスターにはなりたくなかった/僕がツイッターを始めたわけ/閉鎖的な言論空間/使用禁止用語/メディアの責任/真っ赤な嘘/「原発の話はもういいよ」/「君は国家を転覆させようとしているのか」/厚かった「大きな官僚組織」の壁/ツイッター閉鎖 ほか
- 第四章 僕がメディアで伝えたいこと
- 公平中立を保とうとするアメリカメディア/キーワードは「オープン」/情報を共有することの重要性/ドキュメンタリー映画を作った理由/ロスで見た「福島の五〇年後」/『きょうの料理』と『女神ビジュアル』/上映会中止命令/再び二二階の大会議室へ/三〇分の退職劇 ほか
製品情報
製品名 | 僕がメディアで伝えたいこと |
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著者名 | 著:堀 潤 |
発売日 | 2013年09月18日 |
価格 | 定価:814円(本体740円) |
ISBN | 978-4-06-288223-1 |
通巻番号 | 2223 |
判型 | 新書 |
ページ数 | 208ページ |
シリーズ | 講談社現代新書 |