幕末、四方を海に囲まれた出島のような横浜外国人居留地。同心・草間凌之助のもとに厄介な事件が持ち込まれる。イギリス人の居住地区、リトル・ロンドンの屋敷で女の悲鳴が聞こえるという。その悲鳴は原因不明で死んだ前の持ち主のメイドの幽霊なのか!? それから程なくして日本人がピストルで撃たれて殺される。死体の脇に転がっていたのが羊羹のように甘い固形物。異国情緒漂う幕末横浜で謎が謎をよび、事件は拡大していく!
慶応三年(一八六七年)、幕府が大政奉還を上奏して、横浜の外国人居留地にも緊張した空気が漂う。英国人が住むリトル・ロンドン地区のメインストリート・石灯籠通りを歩くのは、パイプ煙草を咥え帯の前に赤房の十手を挟んだ横浜外国奉行所の若き同心・草間凌之介と、その小物・惣七であった。今日も面倒な厄介ごとが持ち上がったのだ。煉瓦造り三階建ての建物から女の悲しげな悲鳴が聞こえたという。
昨年暮れ、この屋敷でメイドが死んだが、元の家主のアメリカ人は奉行所が屋敷に入ることを拒み真相は闇の中であった。屋敷を買ったことを後悔する今の持ち主のイギリス人ミルトン。昨日は悲鳴を聞いて気を失ったという。凌之介は屋敷を調べ、悲鳴の原因の仕掛けを鮮やかに解明した。しかし、誰が何の為その仕掛けを拵えたのか?
しばらくして居留地内で発砲事件が起き、町人風の日本人が銃で殺される。死体の側に転がっていた粘土のような固形物を見つけた凌之介。なめると甘く菓子のようだが食べ物ではなさそうだ。凌之介が殺しの捜査を始めようとした矢先、夜道で浪人風の男達に襲われる。最近横浜に出没している攘夷派の仕業なのか。彼らは外国人と銃の買い付けの商談をしているのかもしれない。殺された男が外国人貿易会社の賭場の常連だったと判明する。
幽霊屋敷の仕掛けの主は? 甘い味の固形物「英吉利羊羹」の正体は? 攘夷派の目論見は? 居留地同心・凌之介の捜査が冴える新シリーズ第一弾!
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