逃げたいのに、逃げればいいのに、逃げない女。山に消えた女たちの「山姫伝説」が残る奥深い田舎町で、女は一風変わった男とともに暮らし始めた。男の秘密と凶暴性が徐々に顕わになっていく。『誰もが知っていても決して言いはしない』『一族の秘密はこうして守られる』現代になお残る、閉鎖社会の無言の不気味さ。男の妻も、母親も、謎の失踪をとげていた――。逃げるしかない。生き延びたいならば。
第4回小説現代長編新人賞受賞の大型新人。
選考委員/石田衣良氏、伊集院静氏、角田光代氏、重松清氏、杉本章子氏、花村萬月氏
逃げたいのに、逃げればいいのに、逃げない女。
山に消えた女たちの「山姫伝説」が残る奥深い田舎町で、女は一風変わった男とともに暮らし始めた。男の秘密と凶暴性が徐々に顕わになっていく。
『誰もが知っていても決して言いはしない』『一族の秘密はこうして守られる』
現代になお残る、閉鎖社会の無言の不気味さ。男の妻も、母親も、謎の失踪をとげていた――。
逃げるしかない。生き延びたいならば。
「山姫」とは、この地方では、誘い寄せられて、そのまま山奥に住み着いてしまう女たちを指す。各地にも「山姫」の伝承は様々な形で伝わっている。あるいは山の守り神であり、あるいは山姥の異名であったりもするが、この地方における「山姫」には特別な霊力や利益といったものはない。単に山に呼ばれ、帰って来なくなった女たち、御母乳山の神に召された女たちをそう総称したのである。――<本文より>
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