宛名書きのアルバイトで生計を立てる吉田青年は、滑稽なまでに心が清く純粋だ。ある日彼は、人々から軽蔑されたいと願う美少女・佐藤ユキに出会う。ユキは不幸になるため、美しく穏やかな青年医師・小森谷からのプロポーズを受けるのだと吉田青年に話す。ひとつの恋のすれ違いが生む、めくるめく会話劇。芥川賞・三島賞・野間文芸新人賞受賞作家の最高傑作。(2012年6月、講談社文庫として刊行)
滑稽なまでに心の清い青年。
不幸になりたいと結婚に踏み切る女性。
富豪から贈られた一億円を燃やす美女。
無意識に愚図な女性を好む青年医師。
すれ違うひとつの恋が、人々の心をあばいてゆく。
いま最も芥川賞に近い作家の最高傑作。
宛名書きのアルバイトで生計を立てる吉田青年は、滑稽なまでに心が清く純粋だ。ある日彼は、人々から軽蔑されたいと願う美少女・佐藤ユキに出会う。ユキは不幸になるため、美しく穏やかな青年医師・小森谷からのプロポーズを受けるのだと吉田青年に話す。ひとつの恋のすれ違いが生む、めくるめく会話劇。
「私はこの結婚で自分が不幸になることを知っているの。だけどいいのよ。私は誰かに利用されて、めちゃくちゃにされたいのだわ。御覧なさい。私は、狂気でも死でもない道を選ぶことになるでしょうよ。私は、自分を軽蔑してくれる人なら誰でもいいの。あなたじゃなくてもいいの。私を軽蔑する男はたくさんいるわ。いろんな理由でみんな私を軽蔑するわ。すぐに性交させるからとか、あるいはただ女だからという理由で私を軽蔑する男もいるわ。でもいいの私は軽蔑されたいの、そのことを素敵だと思っているわ。これは罰とは違うものよ。一種のへりくだりなのよ」(本文より)
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