男は、名前を持たなかった。あらゆる過去を消し去り、汚れたレインコートをまとって、深い闇の中を、夜汽車に揺られていた。他人になりすまし、母の死んだ孤島を、ひたすらめざした。自分は、いったいどこにいるのか? 私とは何か? 自己存在の謎に挑む、壮大なミステリーの実験。埴谷雄高、鮎川哲也氏絶賛の『裏街』に続く第2弾!