2000年第7回ホワイトハート大賞受賞作 代々、男児(おとこ)は産まれぬという奇妙な言い伝えをもつ旧家、藤波家。16歳の少年・薫流(くゆる)は、その歴史に反して産まれた次期当主だ。夏期休暇が近づき、彼は繰り返し奇妙な夢をみる。女房装束をまとう《女》があらわれ、こう告げるのだ。「藤波の家に男児はいないはず。そう決めたのは私なのだから」と。では、ここにいるのは、いったい何者なのだろう──不安を覚える薫流。やがて夢と現(うつつ)の境界は、しだいに曖昧になってゆき──