「君はこんなに美味しくて、いつも、俺に料理してほしくてたまらないくせに……そんなことができる?」 吉野は音を立てて千冬の首筋を吸い、彼のほっそりしたしなやかな腰を抱き寄せると、その唇をゆっくりと味わう。まるで吐息のように「俺だって迷っているのに」という言葉が囁かれた。大切な夢を失わないため、苦しみながらも自ら選んだ結論に、千冬の心は揺らいでいた。