ここから一歩外に出たら、僕たちは異端だよ。姉さん、俺にこの人をくれよ。 人気小説家の音也(おとや)は、新婚早々妻と離れ、執筆のため1人伊豆の別邸を訪れる。そこには家族と別れて暮らす、妻の弟・匡之(ただゆき)の姿があった。 匡之の舌が、自分の指に滲んだ血をなめ取る感触に、音也は目尻を紅く染めながら眉を顰(ひそ)める。「……僕の、血が」呟きながら見上げれば、匡之は確かな欲情のこもった瞳で、音也の顔を見つめていた。(僕らは2人とも、お互いを欲しがっている……)