全部好きだから、怖がらないで……。
孤独を解かすのは、たった1つのキス
レピシエの閉店から2か月――千冬(ちふゆ)は新たなレストランで働き始める。だが、そこで彼の料理はまったく認められなかった!!
「あんたの……煙草(たばこ)の匂いがする」
千冬が両手で吉野の髪や頬に触れてきた。
「ごめんね、千冬」
千冬の指先も、頬も、顎も、瞼も、額も、耳も、吉野が夢の中でいたずらになぞるより、唇で辿るほうがよほど正確だった。
「君のことを、ずっと――」
探していた。待っていた。
欲望よりも、孤独が吉野を埋め尽くしていた。
――千冬の、全部が欲しかったんだ。
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